今回のテーマは今週のG7でも議題となり要人発言も続いた「人民元の切り上げ」についてです。

人民元は1997年のアジア通貨危機以降は政策的に1ドル8.28元前後にほぼ維持されており、人民元のレートは事実上の固定相場制(ドルペッグ制)となっていました。

しかし2005年7月に発表された人民元切り上げではこの1ドル=8.28元という固定レートを1ドル=8.11元に引き上げ、さらに変動幅を前日比で最大0.3%までとする政策へ移行しました。

2007年5月より、前日比変動幅をさらに0.5%に拡大しています。

人民元の切り上げが国際的に大きな議題に上がる背景には、中国の国際競争力の向上と貿易相手国の貿易赤字の問題があります。

一般的に自国通貨安は輸出に有利で自国通貨高は輸入に有利ですが、中国の従来の固定相場制での1ドル=8.28付近のレートは中国の国際競争力からして割安であると考えられていました。

実際の経済力に対し20%も過小評価されているという算出値もあります。

固定相場のレートが中国に与える貿易上のメリットが大きすぎると、諸外国からすると自国の貿易上不利益を被るため、国際問題として固定相場の是正へ動くわけです。

中国の貿易黒字は年々増加しているので諸外国としては対策を講じているのです。

日本も高度経済成長期に同じような歴史があり、固定相場時代の日本が高度経済成長を遂げ、対米自動車輸出を中心に貿易黒字が増えた結果として1970年代には大幅な円切り上げを求められました。

人民元切り上げを中国側から見てみましょう。現在までの中国の成長過程では、海外からの対中投資を助長し外資系企業の進出を促した上で、そこで豊富で安価な労働力を生かし、低コストの製品を大量生産し国際市場で優位性を築いてきました。

しかし人民元の切り上げは外資系企業にとっては対中投資のコスト増となり、中国に進出する海外企業の減少に繋がり、中国の輸出量の低下要因となります。

人民元の切り上げは経済成長の原動力に歯止めが掛かってしまうわけで中国にとってはデメリットの方が多いと言えます。

前述の諸外国の貿易赤字と人民元切り上げに関する内容で、非常に興味深い見方があります。

「人民元の切り上げ→貿易不均衡の是正」というのが必ずしも当てはまらないというものです。現在のアジアでは中国を中心とした国境を超えた生産のネットワークが形成されており、中国はその中で最終的な組立ての役割を担っており、部品は外国から輸入しています。

日本もハイテク部品の提供国となっています。

この状況で人民元を切り上げても中国の輸入コストは下がるので結果的に貿易収支に与える影響は少ないと言われています。
グリーンスパン氏もこれについて「人民元が対ドルで大幅に切り上がれば米国の製造業の活気が増加するというのは誤信である」と過去に発言しています。

つまり現在のアジアの生産ネットワークは、国境を超えて分業が展開されており、従来までの常識であった為替レート調整による貿易収支の変化という因果関係が変わりつつあると言えるのです。

財そのものが国境を超えた分業になると、為替レートの変更が一国の輸出入に与える影響が複雑になり、一義的に「人民元の切り上げ→貿易不均衡の是正」とはなりにくくなっているのです。